BRM517 宇都宮300km西会津試走

普段のサイクリングに使うルートなら数キロの誤差なんて気にしないけれど、ブルベでは距離設定は極めてシビアになる。
200km、300km、400kmと厳密な距離枠があり、それを下回れば新規コース申請は通らず、逆に距離が長すぎれば参加者の負担が増すだけ。
制限時間は変わらないのに距離だけが伸びるとなれば、当然キツくなる。
だからこそ、コース作成時には絶妙な調整が求められる。
理想のルートを引くと大抵は距離が足りなかったり、逆に余りすぎたりしてしまう。
そこで「蛇足区間」をつけて帳尻を合わせることがよくあるのだ。
しかし、西会津300kmだけは違う。
甲子トンネルを避け、只見に抜けて、西会津の風景をたっぷり味わいながら、猪苗代湖畔を眺めつつ帰ってくる。
このルートはまさに“蛇足ゼロ”で構成された理想のルートだ。
走っていて本当に楽しく、自分が作成したルートの中でも上位に食い込む出来栄えだと自負している。
※ただし、熊にはご注意を。

~Start

天気予報をチェックすると、雨の心配はなく、風向きも追い風基調。
これは軽装で走れると判断して、レインウェアなどを装備から外し、後方レーダーをセット。
今年からスタート地点は白河市立図書館をお借りしており、地元発であればスタート20分前に家を出ても余裕で間に合うのがありがたい。
前日も普段通りの生活を送れたおかげで体調も万全。
図書館近くのセブンイレブンで軽く補給を済ませ、静かにぼっちスタート。
5月の朝の空気は冷たいが、心地よく背中を押してくれる。

Start~PC1

朝6時のスタート。
早朝なので交通量も少なく、図書館から羽鳥街道までは実に快適な走行だった。
羽鳥の登りが始まる前に、チェーン脱着スペースでジレを脱ぎ、少し身軽に。
GW真っ只中なので普段より車の往来は多めだったけれど、それが熊対策としてはむしろありがたい。
新緑に包まれた羽鳥の登坂は、爽やかな風と鳥のさえずりが心を和ませてくれる。
ブルベの序盤としては申し分のない雰囲気だ。
7:10に最初のフォトチェック「羽鳥ダム」に到着。
実に順調な滑り出し。

PC1~PC2

PC1で写真を撮ったらジレを着直して国道118号線を下る。
路面は荒れ気味でガードレールも低めなので慎重に。
久しぶりに通ったが、所々舗装が新しくなっていて走りやすかった。

県道に入ると、反射ベストを着たサイクリストが何人か。
声を掛けるとRさくら主催の会津若松600kmの参加者だった。
伴走扱いになってしまうのは避けてあげたいので、軽く挨拶してペースアップ。
その後も何人かランドヌールと出会う。
郡山から雨の中を走ってきたという方も。
「ここからは雨に当たらなそうで良かったです」との言葉――
この一言が後のフラグになるとは、まだ知らなかった。

下り基調でスイスイ進み、45分ほどでPC2に到着。

PC2~PC3

小学校以来?の塔のへつりでフォトチェック。
その後、西会津までは大手コンビニが無いので、田島のセブンでしっかり補給。
阿賀川を越えて西の空を見ると真っ暗。
でも雨雲レーダーには何も映っていない。
山の頂上にかかっている雲だろうと走り出す。

最大の山場に見える「だいくらスキー場越え」は、見た目ほど厳しくない。
登りの最後はトンネルで抜けられるので、意外と楽な区間。
ただ、5月でも残雪があり冷え込む。
ジレじゃなくウインドテックを持ってくれば良かったと少し後悔。

そして下りに入ると、ぽつぽつと雨。
「本降りにはならないだろう」と油断して出発――それが間違いだった。
只見が近づくにつれ、本降りへ。
冒頭を思い出してほしい。
『レインウェアは外して軽装に切り替え』
4時間前の自分を殴りたくなった。

ちなみにRさくらの参加者さんも茨城辺りで雨に当たってしまったとかなんとか。

PC3~PC4

只見駅でフォトチェックを済ませ、ヤマザキショップに駆け込む。
レインウェア、無い。
近くのブイチェーンにあったかもしれないが、その時は頭が回らなかった。

雨雲の動きは、あと2時間もすれば抜けそう。
でも、ここで賭けて外れたらDNF確定。
帰る手段もない。
そこで採用したのは、過去の那珂湊200kmで編み出した秘策――

「出力を上げて体を冷やすな」作戦

ギアを落としてケイデンスアップ。
ただ、ここは下り基調。
体温が上がらない。
只見川沿い、絶景のはずの道を、雨の中ひたすら無心でペダルを回す。
サングラスの人に「もう30回転ケイデンスを上げろ。」と言われたかのよう。

三島まで来るとようやくわき道にそれて交通量が減ってホッとひと息。
峠に入り、少し体が温まる。
そして雨も止み、曇り空に。

西会津に入るも国道49号線は予想通り混雑。
黒いアルファードがギリギリを抜いていったけど、最近は気持ちに余裕がある。

「イキりたくて無理してアルファードを購入したのかな。
 きっと残クレとか無茶なローンで買ったんだろうな。
 可哀そうに、トヨタの養分になってるんだろうな。
 今日も基幹産業を支えてくれてありがとう、残念な人。」

そんな自分の心の中の独白があるおかげで、イライラは抑えられている。

49号線を抜け、道の駅でたこ焼きを食べて暖を取る。
本当はラーメンを食べたかったのだが、財布を出そうとしたら背中が砂だらけになっているのに気付き、屋内に入るのは諦めた。

PC4~PC5

13:30、PC4に到着。
雨も上がって日差しも出てきた。
ウェアが乾き、気分も少しずつ回復。
会津坂下の直線では磐梯山を正面に見ながら、絶景を追い風で走れるご褒美タイム。

だが、最大の登りはここから。
磐梯町の県道7号線。
眺望も無い、交通量は多い、10kmにわたる地味な登り。
しかも、南郷~西会津区間を冷え切った雨の中でケイデンスを上げ続けたせいで左膝にも痛みが出ている。
変速ショックが膝に響くので軽めのギアで変速を少なめにして丁寧に回す。
そして再三言うけど、GW真っ只中。
普段から交通量が若干多い県道なのだが、時間帯が15時頃、GW後半or人によっては始まったばかり、観光地という数え役満状態が追い打ちをかけて来る。
※BRM当日の参加者さんは無事に通過できるんじゃないかとは思う。

236km地点を右に曲がって県道206号線を南下すれば福島県内でも有数の心霊スポットに寄り道できますよ。
そろそろ朽ち果ててもおかしくない建物なので、気になる方は是非とも翁島ペンションで検索して貰えれば。

PC5~Finish

あまりの寒さに、志田浜のセブンに駆け込む。
防寒目的で肌着を買うも、厚手ストッキングには手が出なかった。
さすがにゴールのコンビニにストッキングを履いたまま入る度胸は無い。
サイクルジャージの上から、肌着+ジレ+反射ベストという変な格好で駐車場にいると、革ジャン装備のバイク乗りに「半ズボンで寒くないの!?」と聞かれる。
いや、寒いよ。

湖畔を走っていると、白河方面の空に明るさが。
勢至堂を越えれば晴れているのでは…?と期待。
登りきった先のトンネルを抜けると、気温は一気に15℃へ。
寒くない! 
やっと気持ちよく走れる!
調子に乗って加速したら膝が痛かった。

速度は上がらないが順調に天栄を抜け、大信を越え、予定通り19時前に無事フィニッシュ。

200kmで8時間切れるんだから、300kmでは12時間切れるよね?と前々から思っていたので、結果的に12時間を切る事が出来て個人的に満足。
もちろん平坦で走りやすい道を選べば簡単だけど、そんなルートで達成しても意味がない。
次は400kmを16時間…は無理だし危ないから止めよう。

装備さえ整えていれば、GW真っ只中でも楽しい記憶だけになったはずの西会津300km。
来年は別の300kmを予定しているので、このルートを開催するのは再来年?
いや、10月下旬~11月上旬の紅葉シーズンに開催するのもアリかも。

中間会議までに、また考えよう。

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