BRM328宇都宮200km夏井川溪谷 実走レポート

― あと1分届かなかった200kmブルベの記録と、その内側にあったもの ―

■ 序章

今回の200kmブルベは、振り返ってみると不思議な手応えの残る一本だった。

距離は203km、獲得標高は1,425m、完走時間は7時間32分。
平均速度29.6km/h、平均出力175W、NPは190W。

ゾーン分布もZ2〜Z3が約60%を占め、ロングとしては理想的なレンジに収まっている。
さらにZ4以上が約24%と、レース寄りの強度も適度に含まれている。

つまり数字だけを見れば、「しっかり踏めていて、しかも崩れていない走り」だ。
それでも、このライドはどこか腑に落ちない。

脚が残っていた感覚。
終盤に再び踏み直せた事実。
それにもかかわらず、最後まで埋められなかったわずか1分。
その違和感は、走り終えた直後よりも、ログを見返すほどに強くなっていった。

今回のスタートは、スタッフ作業の関係で30分遅れ。
参加者は20名ほどの比較的コンパクトな構成だった。
前を追う展開であることは最初から分かっていた。
ただ、それを不利とは感じなかった。
むしろ200kmという距離の中で、どれだけ効率よく追い上げられるかという“設計の問題”だと考えていた。
そして実際、前半はその設計通りに進んでいく。
だが、その設計は、ほんの少しだけズレていた。
そのわずかなズレが、最終的に1分という形で現れることになる。

■ セクションごとのまとめ

セクション1(〜石川起点)

25分遅れでスタートする。
前にはすでにいくつかの集団が形成されているはずだが、焦りはなかった。
むしろ冷静に、「どのラインで、どの出力で詰めていくか」を考えながら入る。

平均出力176W、平均速度32.1km/h。
ウォームアップとしてはやや高めだが、脚の反応は良く、踏んだ分だけ素直に速度に変わる。
空気の抵抗も軽く感じる。
ペダリングもスムーズで、無駄な上下動が少ない。
この時点で、「今日は良い日だ」と感じていた。
補給はパラチノースドリンクのみ。
血糖値は安定しており、空腹感もない。
ただし、今振り返ると、この時点ですでに“消費に対して供給が遅れている状態”に入り始めていた。

セクション2(〜PC1)

区間の性格が変わり、出力を要求される場面が増える。

平均出力197W、平均速度29.2km/h。
登りを含むこの区間で、前走者を一気に捉えていく。
踏めば進むし、進めば追いつく。
PC1までに、およそ半数をパス。
身体の状態は非常に良い。
出力的には高い領域に入っているが、主観的なきつさはそれほどでもない。
むしろ、「このまま押していける」という感覚がある。
ただ、この区間で糖質の消費は一気に進んでいる。
それに対して補給は依然としてパラチノース主体。
ここでの“わずかな供給遅れ”が、
まだ見えない形で蓄積していく。

セクション3(〜PC2)

コースは下り基調に入り、スピードが乗る。

平均出力164W、平均速度32.0km/h。
力を抜いても進む。
踏めばさらに伸びる。
この区間ではシリアルバーを2本補給している。
体感としては、この日で最も楽な区間だった。
脚は軽く、呼吸も落ち着いている。
PC2までにさらに半数を抜き、追い上げはほぼ完了に近づく。
だが、この“楽さ”が落とし穴だった。
スピードが出ている分、エネルギー消費は決して少なくない。
それにもかかわらず、補給は依然として遅効性中心。
つまり、気づかないうちに、静かに赤字が積み上がっていく。

セクション4(〜PC3)

平均出力155W、平均速度29.6km/h。
ここでシリアルバーを1本追加。
このあたりから、微妙な変化を感じ始める。
踏めないわけではない。
ただ、前半のように“自然に伸びる感じ”がない。
出力も少しずつ下がっている。
PC3の少し先、コンビニでついに前の1組に追いつく。
ここまでの流れからすれば、そのまま抜いていけるはずだった。
だが、補給と休憩を挟んでいる間に、再び先行される。
その差はほんのわずか。
だが、この時点で“流れ”は完全にはこちらに来ていなかった。

セクション5(御斎所街道まで)

いわき市街地から埠頭にかけての区間。
本来であれば、出力を維持しやすく、巡航で時間を稼げるセクションだ。
しかし、ここで明確に失速する。

平均出力138W、平均速度26.9km/h。
補給ゼリーを2個投入し、さらにセクション6の上りに備えて
カフェインジェル(200mg)も投入する。
判断としては間違っていない。
だが、すでに遅い。
この時の身体は、“これから踏むため”ではなく、“落ちた状態を回復するため”のフェーズに入っていた。
踏もうとしても踏めない。
回せているのに、進まない。
市街地という性質上、この数十ワットの差はそのまま速度差として現れる。
そしてこの区間で失った時間が、そのまま最後の1分になっていた。

セクション6(〜石川起点)

補給とカフェインが効き始める。

平均出力169W、平均速度28.7km/h。
明らかに回復している。
脚は残っているし、踏める感覚も戻っている。
つまり、セクション5の失速は純粋な疲労ではなかった。
ただ、ここで取り戻せるのは“感覚”だけで、時間は戻ってこない。

セクション7(〜Finish)

終盤、再び前の1組の後ろ姿が見える。

平均出力169w、平均速度27.9km/h。
距離は近い。
視界には入っている。
追いつける距離だと感じる。
だが、そのわずかな差が埋まらない。
PC4でも同様に、見えては離されるという展開が続く。
そして最後の直線。
ここで捉えればすべてが繋がる、そう思って踏む。
だが、信号に止められる。
再スタートした時には、すでに決着はついていた。
差は、1分。

■ 全体のまとめ

今回の走りは、出力・効率ともに高水準でまとまっている。
巡航能力、回復力、ペダリング効率、いずれも問題はない。
にもかかわらず、中盤で失速し、終盤で取り返しきれなかった。
これはつまり、脚ではなく、設計の問題である。

■ 考察

今回の補給は、パラチノースを軸に構成されていた。
これは長時間の安定供給には優れているが、即効性に欠ける。
前半で高強度を使いながら、補給は遅効性中心。
その結果、エネルギー供給が需要に追いつかず、中盤で顕在化した。
さらにカフェインも、“踏む前”ではなく“落ちた後”に投入されている。
このわずかなタイミングのズレが、全体の流れを崩した。

■ 今後の課題

必要なのは、大きな変更ではない。
ほんの少しの前倒し。

  • 速い糖の早期投入
  • 高強度後の即時補給
  • カフェインの先行使用

これだけで、中盤の失速は防げる。
そしてその差は、確実に結果に現れる。

■ 結語

ずっと追い続けていたその1組は、経験豊富な男女のペアだった。
派手さはない。
だが、崩れない。
詰めても離れ、離れても見える。
その距離が最後まで変わらなかった。
今回の差は、わずか1分。
だがその1分は、偶然ではない。
積み重ねた判断の差であり、
設計の差であり、完成度の差だった。
勝負は、どこか特定の区間で決まったわけではない。
走りそのものの中で、静かに決まっていた。
次は、その背中を捕まえにいく。

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